ツール・スレイン虐殺記念館
(※1)
金網で覆われた監獄
(※2)
獄舎から外をみる(※3)
尋問室跡(※4)
遺骨だな(※5)
収容された人々の写真群(※6)
独房跡(※7)
デビッド・L.スコット(※8)

ツール・スレイン虐殺記念館は、プノンペン市内のトンレ・サップ川近くにある王宮周辺から、バイクで10分くらいのところにある。舗装道路から土ぼこりの立つぼこぼこ道に折れて2ブロックくらい行くと、塀の切れ目に入り口がある。目立つ看板などはない(※1)。

ベトナム戦争の混乱がカンボジア国内に広がり、内戦状態となった後の1975年に、ポル・ポト政権が中国の支援を受けて樹立される。ポル・ポト政権は、極端な社会改革を強行し、それ以前の為政者側の人びととその一族、および、教師や医師などの知識階層を、改革推進のじゃまになるとして抹殺していった。市民は農村地帯への移住と労働を強いられ、暴行された。この政権下で亡くなった人の数は、200万人ともいわれている。同政権は、1975年4月から1979年1月までの、3年8ヶ月に及んだ。

現在のツール・スレン虐殺記念館は、クメール・ルージュの為政下では、S−21号刑務所と呼ばれ、刑務所としては1976年5月から機能していた。激しい拷問と処刑が行われた。もともとは、1962年に建てられた地元の学校の敷地や校舎を、刑務所に転用したものだった。1980年から、虐殺記念館として開館している。今も、校舎全体がするどい針のついた金網で、覆われたままとなっている。コの字型に配列された4棟の建物がそれぞれ監獄となっていた。(※2)(※3)

4棟の建物のうち、一番左の棟が尋問室跡遺骨だな(※4)(※5)、正面左の棟には収容された人々の写真群(※6)、正面右の棟には雑居房や独房の跡(※7)、右側の棟内には、当時の様子を描いた絵画や器具などが展示されている。コの字型の中央にある受付の裏手に小さな資料センターがあり、研究員がいる。

ここには約2万人が収容され、開放直前に証拠隠滅のために収容者が一気に抹殺されたため、生き残ったのは6人と言われている。人びとが収容された時と、虐殺された時の記録写真が大量に残っていたため、展示内容の写真は壮絶をきわめる。拷問を受けてなくなった人びとの遺体写真の展示数は、アジアの記念館の中でも群を抜く多さである。40度をこえる猛暑の中で、人間が人間にしうることの極限を切り取った写真を、まさにその行為が行われた部屋の中で見続ける。うめき声や臭気が壁から吹き出してくるようで、ひとりで見ているのが怖くなる。

入り口でもらった英語のパンフレットによると、約1720人がこの収容所のために働き、そのうちの54人が尋問を担当していたという。収容時に人びとは、男性、女性、子ども(10歳から15歳)のグループに分けられ、子どもたちはクメール・ルージュに仕えるために訓練され、人間性を失っていったという。

収容された人びとの国籍は多岐に渡っている。ベトナム、ラオス、タイ、インド、パキスタン、英国、米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなど。しかし、もっとも多かったのは自国カンボジアの市民だった。収容期間は通常2ヶ月から4ヶ月、政治犯として拘束された場合は拷問が半年以上続くこともあったという。

展示されている写真の中に、人目をひく一人の白人が写されていた(※8)。たぶん展示写真でただひとりの白人である。別の虐殺の跡地であるキリングフィールドにも貼ってあった写真である。彼は、1946年生まれのオーストラリア人で、1978年11月に拘束された、デビッド・L.スコットである。ジャーナリストだったとも、CIAのスパイだったともいわれており、資料センターに自筆の書類が残っている。

敵国からみればジャーナリストは、スパイ扱いとなっても不思議はない。アジア各地の戦跡で、殉職したジャーナリストたちの痕跡によく出会う。台湾でも、韓国でも、沖縄でも、その痕跡に出会った。

ジャーナリストは、敵国にとってじゃまなだけではない。軍部に都合の悪い取材をして、前線に送られた従軍記者の話の断片は、世界中にいくつも残っている。今も、ジャーナリストが各地で殺されている。知る権利と機密の保持は、永遠にしのぎを削る。ジャーナリストたちは、何を想い戦地に赴き、どのような経緯で殉職していくのだろう。

ツール・スレインの虐殺写真展示の中で、スコットの遺影から、他の遺品や遺影が発するものとは何か異なる語りかけを聞いたような気がした。呼び止められたような気がして、何度もそこへ戻ってみた。しかし、したたる汗に集中力も流れて、思考力がすっかり落ちたせいか、声がしなくなってしまった。時折、彼は何を言いたかったのだろう、と思い出す。

開館時間 7:00〜17:30
所在地 St.113, Boeng Keng Kang 3, Chamker Morn, Phnom Penh, Cambodia
休館日 無休
入場料 施設維持費としてUS$2.00-
電話番号 (855)23-300-698
ギャラリートップアウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館ツールスレイン虐殺記念館侵華日軍南京大虐殺遭難同朋記念館

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